2001年07月

2001年07月01日 00:00

「ちんさん」 2001 11×17.5センチ 多色木版
0107

2年前に死んだナナクサインコのちんさんの写真が最近やっとまともに見れるようになってきたので、追悼の意を込めて彫りました。…といっても木版画をしなくちゃな、と思い立ったのが先で、それからモチーフを探したのが後なんですが。シアン、マゼンタ、イエローの3版に分けました。これは、生徒さんに「分解法」ってのを説明するためにあらかじめ条件を決めてたからです。よーするにデモ版だったりして。でも3日間不眠不休で(あ、不眠はうそです)彫り続けの摺り続けで性も根も使い果たしました。久しぶりですこんなに1コの作品づくりに熱中したの。まだちょっと刷り上がりに納得できるもんができてないんですけどね。…まだまだだな。今月は摺りの特訓じゃわぃ。。。

         

01年7月のタワゴト

すんません、かなり夏に参っております。なぜか鼻水が止まりません。壊れた蛇口のようです。脳みそ溶けてきてんじゃないかと思います。…したがって思考能力もその程度でして。昔から鼻がつまってるとマージャンの輪に入れてもらえませんでしたが、ほんまにいつにも増してヒテー的な考えばかりしております。このままでは人を刺しかねんぞ。あ〜夏早く終わらんかな。。。

というわけで、言いたい事はたくさんあっても言葉にならない日々を送っております。イロイロ雑務にも追われ、どっちかっつーと余裕のない日々でございます。何か差し障りのない話題が見つかったら追記します。今回はこれにて失礼!

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…というところまで一応書いていたのですが、なんとなく木版画についてもうちょっと書きたくなったので追記します。今回デモ版として作ってみた木版画ですが、仕事の相方の専門でもあり、ちょっと本格的な指導を受けてみました。その行程についてちょっと語ってみたいと思います。

それがですね、なんとまぁ冗談じゃないぐらい奥の深い画材であることが身に染みてわかりましたです(いや、まだ染みてはないんだけどさ)。小学校でテキトーにやってたそれとはわけが違います。勘違いしてました、スンマセン…って感じです。

まず、彫る作業にとりかかるまでが長い!!…とある生徒さんは原画を版に分ける作業(版分解)だけで8時間以上を費やしてます。ココを間違えると出来上がりが台なしになるわけですから、ココが命と言っても過言ではないかも。ちなみに版を分ける際に考えなくてはならないのが「主版法」にするか「分解法」にするか「彫り進み法」にするか、の選択です。いっこいっこについて説明していると本が書けるほど長くなるので割愛します。今回私は「分解法のオベンキョー」がしたかったので、原画の上に3枚トレペを乗せて赤用、青用、黄用、それぞれの形を(どことどこが重なって何色になるか考えながら)トレースしてゆきました。

で、次に、版にそれらを転写するわけですが、この時また全ての版がぴったり重なるように、版木に「見当」ってやつをつけなきゃいけないわけですよ。つまり紙の大きさと作品の位置を考えるわけですね。版木を「カギ見当」&「引きつけ見当」を見当した(ははは)大きさに切ります。そこで木を選ぶ作業も加わるわけですが、私は9ミリ厚の5枚張シナベニヤ(ラワンより木目がやさしく、水含みがいいらしい)をチョイス。炎天下の中ノコギリで板をゴリゴリ。自慢じゃないがノコはそんなに下手でもないのよね。…というわけでやっと準備完了、ふぅ。

はてさて肝心の「彫り」ですが、これまた気の遠くなるような作業でした。彫刻刀はまず「見当のみ」「丸刀3種(3ミリ・6ミリ・18ミリ)」「三角刀」「平刀」「版木刀」を使用。楽に作業を進めるために1本ウン千円するよーなやつばっかりをピックアップ(笑)。砥石は水砥の荒砥・中砥・仕上砥、3種を使用。研ぎ方まで逐一指導を受ける(あー確実に職人道歩んでるー)。そして版木刀(いわゆる切り出しってやつです)の正しい使い方にも目からウロコ。あれは親指を上に乗せて縦に握りしめて彫るらしいです(丁度シャーペンの芯を出す時の持ち方)。もちろん木が動かないように作業板ってやつで固定させてホリホリ。…すげえ過保護な環境でしょ(笑)。凹部分の深さ、なめらか具合、巾、傾斜、それぞれに「最低限の決まり」っつーのがありまして、それを守るべく慎重に彫り進む私。はっきり言って神経ピリピリ最高潮で、とても「無心にゴリゴリ」というわけにはいきませんでしたよ。体が緊張してるもんだから、この彫っている作業中の3日間、夜になっても体が醒えててほとんど眠れず…。もしかして私は小心者だったのか?と思ったり。

んでもって「かなり美しい(相方談)」版ができあがったわけですが、実は佳境はそこからでしたわい(笑)。試し刷りは楮(コウゾ)の薄口という和紙を使ってする事になりました。これは彫りを確認するためだけのものなので、色は適当。まーまーの出来。見当も1版を除いて殆どばっちり。ちなみに絵の具はポスターカラーを使用しました。そして専用の刷毛やらブラシやらを何種も使いわけて絵の具を板にムラなく延ばしながら刷り込んでゆきます。その「刷り込み刷毛」ってやつですが、サメ皮でこすりおろす「刷毛おろし」ってのをして毛先を整えなきゃなんないんですねぇ。…うーん、ローラーでベロベロとインクを乗せてただけの小学生時代の思い出が遠のくぜ。。。上手い具合に円を描きながら刷り込んでゆくと、これまた版面に「美しい照り」が出てくるんですよ。絵の具をしっとり含んだやわらかな木の表面、なんとなくエロティック(笑)。そして仕上に木目に沿ってやさしくやさしく絵の具をならし、最後に木目と垂直方向にもう1度表面をなでる。これでやっと見当に紙を合わせて重ねる事ができる状態になりました。(余談:画像のところに「刷り上がりに不満足」と書いていますが、どうも刷り上がりのクオリティにバラつきが見られ、かなりの悪戦苦闘でした。相方さんいわく「刷り込みの力加減がヘタくそ!」なんだそうです。自分じゃ妥協はしてないつもりなんだけどねえ。)

ちなみに紙ですが、本刷りには「三椏入鳥の子」という和紙を使いました。まぁまぁの一般的な木版画用紙らしいです。それをですね、刷る前にしっとり湿らせた新聞紙に4、5時間挟んでコンディションを整えて使うわけなんですが、その新聞紙に湿気を与える作業ってのがこれまたかなりの技術と労力と神経を使う作業でして、相方に「ここが小学校と違う一番のだいご味なのに!」と言われながら、やってもらっちゃいました(トホホ)。和紙をサイズに切るのも、折り目にビスコビタスポンジで水を含ませてちぎる、という神経の細やかさでございます。…はい、このへんからかなり彫りの疲れが出てきてダルダル星人になってきてます。

「刷り」もなかなかに奥の深い作業でした。いわゆる絵の具そのもので軽く刷る「ゴマ刷り」、デンプン糊を混ぜ合わせてベタに刷る「つぶし」、そして「重ね刷り」や「ぼかし」。「ぼかし」には「片ぼかし」「あてなしぼかし」「つけ合わせぼかし」なんかがあるそうですが、今回は半分偶然を狙った(結果論か?!)「片ぼかし」を青版と赤版で挑戦してみました。ちなみに上の画像、青版・赤版は「つぶし」、黄版は「ゴマ刷り」にしてみたのですが、見事に失敗しております。このへんは水や糊の配分が失敗の要因だそうで(…数カ月前他の版で挑戦した時はびっくりするぐらい上手く行ったのになあ)、こーゆーのは経験を重ねて体で覚えていくしかないみたい。

更にはばれんも現在ではかなり進化しています。使ったのは「ディスクバレン」と呼ばれるハイテクばれん。世にあるばれんはピンキリで、 100円のおもちゃばれんから補修のきく10万円相当のしっかりしたものまでありますが、ディスクバレンってのはプラスチック製でディスクの交換可能、お手頃価格、初心者でも均一でハイクオリティな刷り上がりがお手軽に…というスグレモノらしいです(これに頼っても満足な刷りができなかった私は一体…)。

…というわけで、一連の創作過程を書き出してみましたが、皆様いかがでしたでしょうか。どうも1枚やってみたところで「よくわかった」とは到底言えなかったので、ちょっと「これから極めてやろーか」という気になってしまいました。もしかしたら来月辺りまた懲りずに試行錯誤してるかもしれません(今月はもうしませんよ、筋肉痛なんで)。よろしかったらねぎらいのコメントを(笑)。


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永遠の器用貧乏です。

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